「フルメタルジャケット」は、1987年のスタンリー・キューブリックの映画。
死後20年経っても、好きな映画監督ランキングでも第3位に輝くほど人気のある監督だ。
ベトナム戦争で戦地に送り込まれる新兵の訓練所での活動から実際の戦地での激闘を描く。
狂気の中に身を置くと「普通」という基準が変わっていく。
身も心もその「普通」に染まったとき、人はどうなるのか。
彼らが歌うミッキーマウスマーチが全てを物語っている。
総合評価
80
フルメタルジャケット
3.8
Filmarks
3.8
映画.com
4
Yahoo映画
4.2
カラクリシネマ
8.31
Rotten tomatoes
8.3
IMDb
- 狂ってる戦争映画。最高
- 戦争の異常性が伝わる
- 微笑みデブと教官のシーンは笑いが止まらない
- 前半は良いが後半は微妙
- 他の戦争映画に比べてチープ
「フルメタルジャケット」映画情報
タイトル | フルメタルジャケット |
公開年 | 1988.3.19 |
上映時間 | 117分 |
ジャンル | アクション、戦争 |
主要キャスト | マシュー・モディーン アダム・ボールドウィン |
監督 | スタンリー・キューブリック |
「フルメタルジャケット」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ジョーカー -主人公 | マシュー・モディーン |
レナード・ローレンス -微笑みデブ | ヴィンセント・ドノフリオ |
ハートマン軍曹 -鬼教官 | R・リー・アーメイ |
カウボーイ -ジョーカーと同じ訓練仲間 | アーリス・ハワード |
アニマルマザー -M60機関銃手 | アダム・ボールドウィン |
エイトボール -黒人兵 | ドリアン・ヘアウッド |
ラフターマン -ジョーカーの相棒 | ケビン・メージャー・ハワード |
「フルメタルジャケット」予告
「フルメタルジャケット」あらすじ
ジョーカー、アニマル・マザー、レナード、エイトボール、カウボーイ他、新兵たちは地獄の新兵訓練所ブートキャンプに投げ込まれ、残忍な教官ハートマンによってウジ虫以下の扱いを受けていくのだった。
filmarks
「フルメタルジャケット」ネタバレ感想・評価・解説
※これより先は核心には触れませんが、あらすじには触れます。
前半パートは訓練、後半パートは戦地へ
「フルメタルジャケット」の前半パートはジョーカーら新兵が鬼教官にしごかれるシーンが描かれる。
教官からは虫けらのように扱われ、パワハラなんて言葉では生易しく感じるほどの侮辱をぶつけられ、卑猥な言葉でマシンガンのようにまくしたてられる。
ジョーカーと同じ訓練兵の中に微笑みデブと名付けられた何をやらせてもダメで、隊に迷惑をかけ続けている男がいるのだが、
入隊直後はニヤニヤが消えなかった男が、次第に自信を失い、尊厳を奪われ、自我を失っていく様子を見ることができる。
微笑みデブが何かするたびに連帯責任を背負わされ続ける。
途中からは微笑みデブの失敗は仲間たちのみに罰せられ、微笑みデブは褒美をもらっている横で仲間たちは腕立て伏せにいそしむ。
人が人の心を打ち砕く瞬間をこの映画で感じ取れるだろう。
ベトナムの戦闘でも、皆どこかネジがおかしい。いわゆる私たちの「普通」にはない。
民間人のヘリコプターの上から乱射する奴、敵ベトナム人の死体を椅子に座らせて自慢げに見せびらかす奴、この地にとっては狂気こそが「普通」なのだ。
ジョーカーも訓練兵の頃は、微笑みデブと違って自我を保っていたし、ベトナムに入ってからも報道班として後方部隊にいたうちはまだ目つきが普通であった。(これは基地の中で仲間にも指摘されている。)
しかし、だんだんと前線に行くにつれて、その様子は変わっていく。
いつしかあの世まで見通すような瞳に変わるのだ。
戦争という行為が人間を変えていく過程を観ることができるのが「フルメタルジャケット」だ。
ミッキーマウスマーチという狂気
「フルメタルジャケット」では、しばしば陽気な音楽が流れる。流れてくる映像は狂気の世界なのにだ。
この陽気で平和な音楽こそが私たちの日常のはずなのに、ここではその音楽こそが狂気に映る。
その代表的な音楽がミッキーマウスマーチであり、老若男女問わず愛されている平和の象徴のような歌を使うことで戦争そのものの異常性を、その大義なき戦いの不毛さを表している。
事実、ベトナム戦争では実際に兵士たちが歌っていたらしい。
この映画には戦争のよくある残虐シーンや思わず目を背けたくなるようなシーンはあまりない。
撃たれるときもどこか現実感のない演出がされている。
しかし、それにもかかわらず、戦争という行為がいかにして人間の狂気性を押し出し、心を壊していくのかを「フルメタルジャケット」は伝えている。
シュールで笑えるシーンも
よくお笑いの話に出てくる緊張と緩和ではないけれど、「フルメタルジャケット」にもそんなシーンを見ることができる。
鬼教官がずっと卑猥な言葉を浴びせ続けたり、「Sir(サー)」を訓練兵がずっと連呼していたり、笑わせようとしているわけではないが、馬鹿マジメに狂気のシーンを演じ続けていると、じわじわとこみあげるものがある。
実際に何度か笑ってしまうシーンはあった。
微笑みデブと鬼教官のやりとりはもちろん、撃つなと言われているのに、ダチョウ俱楽部ばりのフリと言わんばかりに何度も言っても撃ち始めるシーンなどはムチャクチャのようでいて、コントのように整っているといえる完成度の高い作品だった。
それがスタンリー・キューブリック作品の見どころであり、彼の撮影する映像には、人を惹きつける中毒性のある演出が多い。
スタンリー・キューブリックの演出自体が独特なものであり、それが戦争の狂気にうまくハマった映画だ。
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監督 | スタンリー・キューブリック |
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冬の間閉鎖されるホテルの管理人としてやってきたジャック一家が、いろいろな恐怖に見舞われて、ジャックもだんだんとおかしくなっていく話。シャイニングというテレパシーや予知能力を持つ子どもがホテルにいる悪意と戦う話が原作だけれど、キューブリックによってその能力よりもホラーやスリラー演出がフォーカスされ、原作者キングが激怒した作品。しかしその演出はやはり素晴らしく様々な作品でオマージュされている。
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