映画「アド・アストラ」は2019年のブラピ主演の映画。
16年前に海王星で消息を絶った父が生きていることを知り、新宇宙まで旅に出る近未来SF。
映像のキレイさや宇宙の壮大さもあるけれど、文学的で人の内面に目を向けた文系向けの作品だ。
ところどころ、「宇宙でそんなことできるの!?」と言いたくなるようなシーンもあるのでツッコミどころもある。
SFを期待しすぎると、若干肩すかしになるけれど、余韻の残るブラピの内面を想像できるおもしろい映画ではあった。
70点
「アド・アストラ」映画情報
タイトル | アド・アストラ |
公開年 | 2019.9.20 |
上映時間 | 123分 |
ジャンル | SF |
監督 | ジェームズ・グレイ |
映画「アド・アストラ」キャスト
登場人物 | キャスト |
---|---|
ロイ・マクブライド | ブラッド・ピット |
H・クリフォード・マクブライド | トミー・リー・ジョーンズ |
ヘレン・ラントス | ルース・ネッガ |
イヴ・マクブライド | リヴ・タイラー |
トーマス大佐 | ドナルド・サザーランド |
ロレイン・ディーヴァース | キンバリー・エリス |
ドナルド・スタンフォード | ローレン・ディーン |
ローレンス大尉 | ドニー・ケシュウォーズ |
映画「アド・アストラ」あらすじ
ロイ・マグブライドは地球外知的生命体を探求に人生を捧げた英雄の父を見て育ち、自身も宇宙士の仕事を選んだ。しかし、その父は地球外生命体の探索に出た船に乗ってから 16年後、43億キロ離れた太陽系の彼方で行方不明となった。だが、父は生きていた──
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映画「アド・アストラ」ネタバレ感想・解説
文系向きのSF映画
映画「アド・アストラ」は、知的生命体を探しに太陽系の端(海王星)まで行ったきり消息を絶った父を探しに行く映画。
消息後、息子のロイが宇宙で船外活動をしているところに、父の宇宙船からサージと呼ばれる電磁波が地球に襲い掛かる。
宇宙の彼方で精神疾患を抱えた父が地球を攻撃しているとあせった地球人たちが父の説得にロイを火星に送るという話。
すでに人類は宇宙に進出していて、宇宙でも資源の奪い合いをしているという近未来の話だから基本的に世界観はずっとSF。
月は開発が進み、地下で普通に人間が暮らしていたり、火星にも基地があり、そこで人類が誕生していたりとなかなかワクワクする世界観を見せてくれる。
でも、科学的な見地から考察された宇宙とも言い難いし、リアルさよりもガンダムの100年前ぐらいの世界を見ているようだった。
まだせいぜい月の表面で小競り合いをしてるだけだけど、宇宙軍と呼ばれる組織もできてたし、そのうちに連邦軍とか出てきて、独立戦争とかはじめちゃったりする感じ。
だから「アド・アストラ」は宇宙理論などの理系の分野に力を入れていない。美しい宇宙の映像には目を見張るものがあるけれど、あくまでそれは芸術の観点だ。そして色濃く描かれるのはロイの内面なのだ。
ロイは父親が海王星で消息を絶ち、母も激しくショックを受けたことで、ロイ自身も感情をうまく表現できない人間に育っていた。
そのトラウマの元となる父に会いに64億キロ離れた海王星まで行くんだけど、別にそれって宇宙じゃなくてもいいよね?といういかにも人間臭いストーリーになっている。
だからこの映画は純粋にSFというものが好きな人にとっては、ちょっと肩透かしする部分もあるかもしれないし、退屈な話にも聞こえてしまうだろう。
宇宙という無の世界に生きる孤独に対する問いもあるのだけれど、ロイはどちらかというと父親を亡くした喪失感に対してトラウマがあるだけで、宇宙への畏れや、生きるとは何かという哲学的な苦しみを受けているわけではない。
ただ、父が愛おしいだけだ。
その喪失感から人をうまく愛せなくなっていたのだけれど、64億キロ離れた世界で、愛だとか憎しみのない世界に生きる父親を見て、反面教師的に愛を取り戻すことになる。
余韻も多く、スローペースで始まり、スローペースで終わるところもあるので、はっきりと好き嫌いは別れそうな映画。
いるだけで絵になるのに、言葉には出さずにロイの苦しみを表現できるブラピがいるおかげで情緒的な映画に仕上がっている。
SF映画と見せかけて宇宙が舞台なだけのラブストーリー「パッセンジャー」も同じような部類。これもラブストーリーが好きかどうかで評価が分かれる映画。ちなみにこちらはあんまり好みではない。
ここがヘンだよアド・アストラ
だからあまり宇宙理論的なところは出さずに、こんな宇宙になってたらいいなぐらいの宇宙に見えるわけだけど、それにしてもやりすぎでは?というシーンがあった。
1つ目は火星から出発する場面。
火星で父親にメッセージを送ったとき、つい感情的になってしまったロイは、任務の解除を言い渡されてしまう。
そこで火星生まれ火星育ちの所長と出会い、カージャックでもシージャックでもなく、スペースジャック?を決行するんだけど、、
ここで「そんなことできるの!?」っていうシーンが炸裂する。
ロイは発射する直前の宇宙船に慌ただしく乗り込むのだ。そしてドアを開けられたのにすぐには気づかれない。
まずここがムチャクチャだしありえないと思うのだけれど、とにもかくにも乗り込みに成功する。
そして故意ではないにせよ、結果的に3人とも殺してしまい、スペースジャックを成功させてしまうのだ。
アクションよりのSF映画ならいいのだけど、本格派SFっぽい演出だから、どことなく違和感のある展開だった。
そしてもう1つ。
海王星から帰還するときにロイは宇宙船の装甲の一部をおもむろにはがす。
そしてそれを盾にして、海王星の周りを回っている隕石につっこんんでいくのだ。これはなかなか笑わせてもらった。
確かに宇宙船の装甲なので下手な隕石ぐらい跳ね返す力があるのかもしれないけれど、にしても宇宙服をきただけの生身の人間が隕石群に突っ込んでどうして無傷でいるのか。
そして父親と帰るつもりだった彼は、そもそもどうするつもりだったのか。まさか父親を盾にして進むつもりはあるまい。
地球の16年間は、海王星の宇宙空間でどれぐらいの時間感覚になるのかわからないけれど、その深宇宙で自我を保つことができるものなのだろうか。すべてを宇宙に捧げた父親の悲哀も伝わってきた。
地球から64億キロも離れた場所で行われる親子愛の映画だった。
というわけで、タイトル通りあまり理系向きの映画ではないけれど、文系なら十分楽しめるだろう。
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