この映画は、批評家たちの間で有名なコーエン兄弟による作品だ。
ストーリーは、難しいわけではない。
お金に困って狂言誘拐をたくらんだ夫により、多くの悲劇が起こるブラックジョークな映画である。
ストーリーに謎があるわけではないが、この話の流れ上、なぜこの設定が必要なのか、なぜこの演出が必要なのか分からない点がいくつかあった。
- マージが妊娠している理由
- マージの旦那がニートである理由
- マージの同級生が押し掛けてくる演出の理由
ストーリーの進行上、この設定や演出は必要ない。
狂言誘拐を発端に殺人事件にまで発展した流れなわけだからだ。
なぜ必要だったのか。
お金と人間をおろかさをジョークを交えて描いたコーエン兄弟のメッセージが見え隠れしているためだ。
映画「ファーゴ」のあらすじ、キャスト
映画「ファーゴ」 あらすじ
カー・ディーラーのランディガードは借金返済のために自分の妻ジーンを誘拐し、会社のオーナーでもある義父から身代金をいただこうと考えた。誘拐を実行するのは、妙な二人組、カールとグリムスラッド。だがジーンを自宅から誘拐した二人は、隣町ブレイナードまで逃げたところで、停車を命じた警官と目撃者を射殺してしまう。ブレイナードの女性警察署長マージは事件を追ってミネアポリスに赴くが、その間にも狂い始めた誘拐計画は次々と犠牲者を産んでいく……。
引用:all cinema online
映画「ファーゴ」 キャスト
- マージ・ガンダーソン / フランシス・マクドーマンド
- カール / スティーブ・ブシェミ
- ジェリー・ランディガード / ウィリアム・H・メイシー
- グリムスラッド / ピーターストーメア
- 監督 ジョエル・コーエン
映画「ファーゴ」 舞台
舞台となるのは、アメリカ中西部にあるブレイナードという町。
ランディガードが勤めるディーラーのあるミネアポリスからは約200km離れている。
この距離を妊娠した警官が行ったり来たりするということに驚きだ。
映画のタイトルとなり、冒頭でジェリーとカール達が会った酒場がファーゴ。
映画「ファーゴ」 ネタバレ感想
ファーゴは、金に踊らされる人間の話
ファーゴの登場人物には、お金に目がくらんだ人間がメインキャラクターとして登場する。
そして、それらの登場人物が総じてどこかマヌケだ。
お金に困って狂言誘拐を依頼してしまうジェリー。
4万ドルで誘拐を引き受けるわりに何の計画性もないカールとグリム。
お金が大事でノコノコ誘拐犯の前に1人で姿を現すジェリーの義父。
皆が愛らしくどこか頭の悪い行動をする。
彼らに共通して言えるのは、皆お金に踊らされているということ。
これがこの映画の肝である。
マージの夫がニートである理由
唯一お金に踊らされていない人間が登場する。
それは、マージの夫ノームだ。
ノームという人間が重要な対比の役割として登場する。
マージの夫であるノームは絵描きだ。
切手の絵柄に選ばれるために絵を描いてに応募する。
映画のラストで彼の絵が3セントの切手のデザインに選ばれる。
賞金があるようにも見えない。
ライバルの方が高い切手だと愚痴を言うが、100万ドルうんぬんの話のなかでは小さすぎる世界観だ。
つまり彼は、お金に踊らされていないのだ。
マージは妊娠し、幸せそうに暮らしている。
一方、本来お金には困らないはずのジェリーは全く幸せそうに見えない。
幸せになるための手段としてお金があるのに、手段が目的化してしまうことへのおろかさをノームを通してこの映画は伝えている。
マージはなぜ妊娠しているのか
マージが妊娠していることもお金と幸せは別ものだということを象徴している。
警察署長といえど、田舎の警察。それほど裕福な暮らしをしているようには見えない。
かたや絵描きという自由な生活をしているノームを養わなくてはならない。
しかし、彼女は幸せそうに生きている。
たった少しばかりのお金のために人生をムダにはしたりしない。
マージの同級生はなぜ押し掛けてきたのか
マイク・ヤナギダ。
殺人事件のテレビを見たという理由で突然マージに連絡してくる。
リンダという最愛の人を失う不幸な人間として近づいてくるが、真相はそうではない。
リンダにフラれ、マージに近づこうとしているただの独身男性だ。
真相を聞いたマージは、夫以外の人間のバカさ加減に呆れてしまった。
ジェリーもマイク・ヤナギダも都合の良いようにウソをつく。
これらを見てマージは思っただろう。
人生はもっと価値があり、3セントの切手に残念がる絵描きのノームと暮らしている私は幸せだと。
映画「ファーゴ」あとがき
この映画はとても淡々と進む。
その間に人は何人も犠牲者が出る。
犯罪者の父と、馬鹿な計画によって殺された母を持つ残された子どもが不憫でならない。
このテーマを喜劇のように扱い、犯人の残忍性やマヌケさを前面に押し出したコーエン兄弟はやっぱり評価されてしかるべき映画なのだ。
この映画は冒頭で、真実の話のようにテロップを流しているが、実際にはこの事件は実在していない。
それは、ポール・バニヤン像からも見てとれる。
彼はアメリカ入植者たちの民間伝承に登場する巨人であり、ホラの象徴とされている。
願わくばこの映画の登場人物たちがホラであることを望みたい。
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