アカデミー賞有力候補のJOKER
アメコミで生まれた悪役ながら、人々を魅了してやまないカリスマ性を持つこのキャラクターは、幾人もの俳優が演じてきた。
今作では、そのJOKERが主役となり、なぜ彼が悪のカリスマになったのかを描く。
すでにヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞受賞しており、アカデミー賞の有力候補だ。
だが気をつけて欲しい。
気軽に見るとオチること間違いなしだ。
映画「JOKER(ジョーカー)」予告
映画「JOKER(ジョーカー)」映画情報
監督 | トッド・フィリップス |
脚本 | スコット・シルヴァー |
音楽 | ヒドゥル・グドナトッティル |
公開 | 2019年10月4日 |
製作費 | 5500万ドル |
興行収入 | 9億9000万ドル |
受賞 | ヴェネツィア国際映画祭 2019年金獅子賞 |
映画「JOKER(ジョーカー)」キャスト
アーサー・フレック | ホアキン・フェニックス |
マレー・フランクリン | ロバート・デ・ニーロ |
ソフィー・デュモンド | ザジー・ビーツ |
ペニー・フレック | フランセス・コンロイ |
トーマス・ウェイン | ブレット・カレン |
映画「JOKER(ジョーカー)」評価
すでにヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したが、評価は割れている。
主役のホアキンフェニックスの演技や監督とそのパフォーマンスには良い評価が見受けられるが、強めの病的な描写や暴力シーンは評価を二分している。
しかし、興行収入は1億ドルを達成しており、大きな成功を収めていて、2019年の興行収入ランキング6位だ。
興行収入ランキングを見て欲しい。確かにこれもアメコミ作品であり、ファンも多い。
しかし、これほどまでに重苦しい空気の映画が上位に上がることはとても珍しい。
映画「JOKER(ジョーカー)」ネタバレあらすじ
誰からも必要とされない者
アーサーは、ゴッサムシティでピエロを演じながら生計を立てていた。
体の弱い母を看病しながら、コメディアンを目指し、トーマスウェインというコメディアンに憧れて、彼のテレビは欠かず見ていた。
コメディアンを目指していた彼は、皮肉にも自分の意思に反して笑ってしまう病気をもっており、仕事仲間からも、社会からも気味悪がられ、疎遠にされていた。
人生もうまくいっていなかった。
仕事の最中、若者に絡まれリンチを受け、仕事仲間に護身用の銃を持たされる。
しかしそれは罠であり、銃を持っていることをチクられ仕事をクビになってしまう。
その夜、ピエロの格好をしたままのアーサーは、電車の中でまたも彼は笑ってしまう病を発症し、中にいた男達に殴られる。
そしてさまざまなフラストレーションの中、
ついにアーサーは男たちを銃で殺してしまう
しかし、彼は後悔しなかった。それどころか爽快感すら感じていた。
3人が殺されたことが報道される。
犯人は不明だがピエロの格好をしていたため、殺人ピエロとして大きく報じられた。
殺人ピエロ
街では、殺人ピエロをヒーローと呼ぶものさえいた。
今までの人生で、彼は誰にも必要とされず、自分という存在そのものが無い気がしていた。
しかし殺人ピエロとして注目を浴びることで、
自分が他人から認知されている
という実感を感じていた。
帰宅後、同じアパートに住むシングルマザーのソフィーの部屋に訪ね、逢瀬を重ねる。
彼女のことを以前気になって尾行したことがあり、それをきっかけに知り合いになっていた女性だった。
コメディアンを目指すアーサーは、ソフィーを劇場に誘いネタを披露する。
最初は笑ってしまう病が出てしまい、ペースを掴めずにいたが、次第に笑い声がおきはじめ、彼は舞台でウケることの気持ちよさを感じとる。
ソフィーも殺人ピエロのことを腐った富裕層に対するヒーローだと称賛していた。
一方、アーサーの母ペニーは、ゴッサムシティの市長を目指すトーマスウェインに手紙を出していた。
30年前、ペニーは、トーマスのもとで働いていた。彼は優しいから私たちをきっと助けてくれると手紙を書き続けていたが、返事が来たことはなかった。
ある日、アーサーがこっそり手紙を見ると、過去にトーマスと関係を持ったことが書かれていた。
それはアーサーがトーマスの父親だと分かるものだった。
トーマスの家を訪ねると家の前でのちのバットマンとなるブルースに出会う。
しかし、ボディガードに止められてトーマスには会うことができなかった。
その夜、母親の容態が悪くなり、緊急入院する。脳卒中だった。
病院にはアーサーを心配してきてくれたソフィーもいた。アーサーをきづかいながらそばにいてくれた。
その病室で、マレーフランクリンのテレビを見る。するとなんとアーサーのことが紹介されていた。
そう、アーサーが舞台にだった模様が紹介されていたのだ。
喜ぶアーサーだったが、そこには想像していた自分とは全く別の自分が映っていた。
彼は笑わせていたのではなく、笑われていた
大きな笑い声は彼の勘違いだった。
この番組ではおもしろくないネタを笑いながら行うアーサーをいじることで笑いを生み出していた。
彼はまた笑っていた。
ある日、マレーフランクリンの番組から電話がかかってきた。
テレビで放映したアーサーが好評だったらしく、番組に出演してくれないかというものだった。
アーサーはテレビに出ることを快諾する。
妄想
アーサーはトーマスのいる劇場に忍び込み、直接対面することにした。
自分が息子だと名乗り出るも、トーマスもペニーは被害妄想がありイカれている女だと言われてしまう。
また、アーサーは息子でもなくただの養子だと言う。
それを確かめるべくアーサーは、ペニーが入院していたとされる病院を訪れ、30年前の記録を見せてもらう。
そこでアーサーは、
- ペニーが精神疾患で入院していたこと
- アーサーは養子縁組だったこと
- アーサーは虐待を受けていたこと
を知ることになる。
絶望したアーサーはソフィーの部屋を再び訪れる。
ソファーに座って待っていると、娘を寝かしつけたソフィーが戻ってきたとき、ソフィーは恐怖に震えた声でこう言った。
あなたアーサーって人よね?部屋を間違えているわよ。
ソフィーは、アーサーのことを良く知らないようだった。
まるで不審者を見るような怯えかただった。
そう。すべて彼の妄想だったのだ
母親のペニーと同じように妄想癖がアーサーにはあったのだ。
部屋に入ったこともなければ、劇場に来たこともない。
母親の病院には最初からアーサーしか来ていなかった。
全てに絶望したアーサーは、母親の病室でペニーを窒息死させる。
アーサーは、生まれてきてから幸せと思えることは何もなかった。
楽しいことは何もなかった。
人生には絶望しかなかった。
JOKER
かつての仲間がやってきた。アーサーは、地下鉄の犯人ではないかと警察に疑われていた。
銃をアーサーに渡していたため、口裏を合わせようとやってきたが、その仕事仲間をアーサーは殺してしまう。
しかし、一緒にいた小男は殺さなかった。小男はアーサーのことをバカにしたことがなかったからだ。
ピエロの化粧をして、アーサーはマレーフランクリンのテレビに出演するためにテレビ局に入った。
そこでアーサーは自分のことを「JOKER」と呼んで欲しいと依頼する。
事前に練習してきたダンスを披露しながら登場するがアーサーのギャグはウケない。
やはりここでもマレーフランクリンは、彼をいじって笑いをとろうとしていた。
アーサーは、突然自分が地下鉄の殺人ピエロだとカミングアウトする。
彼は自らを語る上で
正義も悪もただの主観なのだ
と語る。
生放送中に非難がとび、マレーフランクリンはアーサーを咎めるも、アーサーは自分を笑い飛ばしたマレーフランクリンを射殺する。
彼はすぐ捕まるも、ゴッサムシティは殺人ピエロ効果で暴動が起きていた。
護送中、アーサーの乗る車に突撃され、彼は逃がされる。
そこで彼は自分がカリスマになっていることを知る。
この暴動の中、トーマス夫妻は何者かによって息子ブルースの目の前で射殺される。
場面が変わり、彼は病棟と思われる場所にいた。
アーサーは、医者におもしろいギャグを思いついたという。
医者が内容を尋ねるも、言っても分からないよと話すのだった。
映画「JOKER(ジョーカー)」ネタバレ感想
現実と妄想の境界線
彼は妄想癖があったちめ、ソフィーとの関係はすべて妄想だったことがわかっている。
しかし、最後のシーン。
彼が病棟で、おもしろいギャグというのは、何を指しているのだろうか。
始まりからエンディングまでを指しているのではないだろうか。
その含みを持たせて映画は終わる。
映画の中で、彼が主観となるシーンはすべて彼の都合の良いように書き換えられている可能性がある。
人を殺したのは実は彼ではないかもしれないし、母親も殺してないのかもしれない。
トーマスウェインはもっと人当たりの良い人間だったかもしれない。
何が事実で、何が妄想なのか、その線引きがわからないが、それこそがアーサーが生きている世界なのだ。
これを観る観客にも、その怖さを伝えてくる。
あなたもふと妄想することがあるだろう。
妄想している意識があればいい。
しかし、無意識のうちに妄想しているのだとしたら?
それは、自分自身の記憶として定着してしまう危険性をはらんでいる。
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まず見ておきたいのは、クリストファーノーランのバットマンシリーズ。
特にジョーカーが敵としてあらわれる、バットマン ダークナイトは必見だ。
ジョーカーは、故ヒースレジャーが演じるが、ホアキンフェニックスと同じく狂気の演技が目を見張る。
バットマン視点で描かれているが、こちらも正義と悪の境界があいまいであり、奥が深い。
ヒーローに対するアンチテーゼを含む意味ではMナイトシャマランのや「アンブレイカブル」から始まる3部作も見てほしい。
超人的な力を身につけたものは社会からどういう扱いを受けるのか、悪がいるから正義が存在するという皮肉に満ちた扱いもたまらない。
社会からの疎外という意味では、邦画「楽園」でもみれる。
社会に適合できない人間は疎外され、疑われる。
人は集団行動できない人間に、本能的な恐怖を覚え攻撃するのだ。
誰からも必要とされないことの苦しみをら描く上では日本も世界も本質的に違いはないことが見てとれる。
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