10月25日よりAmazonPrimeOriginalで配信開始している龍が如く-Beyond the Game-が炎上している。
多分普通に楽しんでいる人の数もいると思うが、原作ファンからは怒りの声が沸いている。
龍が如くのゲームはプレイしたことあるけど、全シリーズはやっていないし、めちゃくちゃ思い入れがあるシリーズではない身からすると、邦画ドラマのクオリティとしては高いので、個人的には満足できる出来だった。
正直「地面師」のような別次元のドラマを見せてくれるところまでは行かないもののエンタメ映画として十分に面白いし、日本の俳優たちが高い予算をかけた作品に参加しているのは、単純に新鮮味もある。
車が空から降ってきたり、巨大な屋外セットを作ったり、膨大なエキストラを用意したり、残念なことに日本の予算ではできないことを世界をターゲットにしてアメリカの資本を使い、あまりみることのない雰囲気のドラマを見ることができたのはよかった。
あと、俳優が豪華であるだけでなく、河合優美の存在感がドラマとしての完成度を高めているとも感じた。
でも原作ファンからすると許し難いなという描写があったのは察するにあまりある。
世間の評価は辛口。「#龍が如く感想」ではネガティブコメントで埋め尽くされている。
それもこれもオリジナルストーリーをうたいつつ、キャラクターの性格からして改変されているからだろう。
なんでこんなに炎上しているのかを含めて問題点を語っていきたい。
龍が如く Beyondo the Gameがひどいと言われている原因
完全オリジナル?のストーリー
ゲーム「龍が如く」シリーズは、「大人向けのエンターテインメント作品」というコンセプトを基に、セガより2005年に誕生。
巨大歓楽街に生きる主人公たちの人間模様を描き、これまでゲームが決して踏み込むことのできなかったリアルな現代日本を表現したシリーズ作品です。
世界的に愛されてきたゲームシリーズを原作とした、Prime Video実写ドラマ『龍が如く ~Beyond the Game~』は、ゲームと同様、歓楽街・神室町を舞台に、「堂島の龍」呼ばれる主人公、桐生一馬の成長物語をオリジナル脚本で描くクライム・サスペンスアクションです。
確かにゲームは革新的だった。
新宿歌舞伎町を彷彿とさせる街並みに、実際の店舗であるドンキホーテを登場させたり、キャバクラをゲームの中で楽しむといった今までにないゲーム性で話題を呼んだ。
ミニゲーム要素も多くやり尽くすには膨大な時間を溶かす必要があった。
今でこそゲームの世界と現代を融合させた世界観は珍しくないが、20年前の当時は画期的。
さらにシナリオの完成度は高く、ファンタジーではないリアルな場所を舞台にしているからこそ、映画のような物語性があった。
それに対してBeyond the Gameでは、ストーリーはそれぞれの要素を残しつつも基本的に完全オリジナルドラマという体をとっている。
出てくる登場人物は龍が如くでも登場する人物だし、いくつかのシーンはゲームと同じ構成をとっているものの人間関係や話の流れはかなり異なる様子。
ゲームでは由美は10年後、失踪していたし、錦の妹は病で寝たきりだったはずだ。
年代は同じにしながらも桐生たちの年齢もゲームと比べて10歳ほどは若い設定と、いろいろ変わっている。
3話まで見た限り、桐生と錦はまだ決定的な亀裂が入っておらず、堂島組長を殺害した時の様子はまだ不明。
話の構成も大きく変えている。
錦が堂島組長を殺すきっかけとなった由美が攫われる事件については、まだ明らかになっていないが、2005年の世界には錦の妹が登場していないことから、
おそらく妹が寝たきり、もしくは命を奪われるような事件があり、そのことを恨んだ錦が堂島組長を殺し、その罪を桐生が被ったというようなところだろう。
原作の流れを汲みつつも尺の流れで一部を改編というわけではなく、ストーリーの軸は一緒だが流れは大きく異なっている点が原作好きの人たちからは怒りを買っているようだ。
確かに「あれ?こんなストーリーだっけ?」と思わせるような点もあれば、「あー、こんなシーンあったよな」と思う部分もあったり、色々混乱する作りになっている。
1995年と2005年を交互に見せて、「なぜ桐生が刑務所に入ったのか」を出所後のストーリーを見せつつ物語の核心に迫っていく流れは、第3話までの状況では分かりにくい作りになっている。
登場するキャラクターも多いので、ゲームと違ってどんどん話が流れていく映像化にあたっては不利な点も多い。
一方で、ストーリーの盛り上げ方はアメリカナイズドされていると感じる。
1話の導入部分では、それほど惹かれる描写はなかったのだが、2話、3話と進むにつれて、だんだんとのめり込むようになっていったのは世界観の作られ方やサスペンスとしての緊迫感がとてもよく表現されているからだろう。
全体的な幹のストーリーは原作のシナリオ力がとても高いため、その点においては安心して見られる。
賀来賢人もインタビューの中で
第1話の時点で、みなさんも感じると思うのですが、すごく展開が早い。このスピード感は、日本の一般的な地上波のドラマとは異なるものです。
といっていたが、展開の速さは海外ドラマ並み。エンタメ映画としては十分に面白い
ただ、オリジナルといいつつ、根っこが同じなのでファンも戸惑いの色を隠せない。
キャラクターが結構違う
一番気に入らない点が多いのはキャラクター。というかストーリーのブレはキャラクターの問題からすると微々たるものと思われる。
「龍が如く」がなぜ続いているのかというと、桐生という男の生き様に惚れたファンが多いからだ。
さらに真島のようなぶっ飛んだキャラクターなど、サブキャラも含めて愛されているキャラクターが多い作品。
だからこそ20年経過してもナンバリングが続く人気タイトルになっている。
そんな中、「本当にこれが桐生?」とも呼べるようなキャラクター像の違いには異を唱える人も多い。
公開前に「堂島の龍になりたいんです」と桐生のセリフで炎上していた。
実際には、桐生たちは堂島組が仕切っているゲーセンを襲い、大金をせしめてひまわりから逃亡しようとする冒頭の描写から来ている。
堂島組に捕まったことでセリフを吐いているので、まだ裏社会を知る前の若造のセリフではある。
年齢が10歳ほどゲームの設定と異なることで、青臭い描写が多く、桐生が男になりきれていないところも不満が溜まっている理由だろう。
そして、特に反感を買っているのは、1話のシーン。
このゲーセン襲撃事件のケジメを取るため、親である風間は指を詰めている。
しかし、桐生も錦も反抗期であるため、詰めた指を見た桐生は逆ギレするのだ。
正直、え?庇って指詰めたのに逆切れ?みたいなモヤモヤ感は残った。
他にも「風間の野郎の支配からの卒業だな」とか、桐生なら吐かないようなセリフや言動が多い。
桐生がゲームの世界よりも10歳ほど若い青二才ということもあるのだけれど、それを差し引いてもやってはいけないことがあるみたいなタブーを踏んでしまった感がある。
ライトユーザーの私でも桐生の男気のようなものは覚えているし、堂島組のために一生懸命行動している彼をみると何か別人を見ているかのようでもあった。
金、裏切り、殺し合いの殺伐とした裏社会を生き抜く世界だからこそ、風間と桐生の親子の信頼を超えた関係性に龍が如くの魅力が詰まっているのに対して、1話でそれをぶっ壊している感じは怒りを買ってもしょうがない。
3話の時点では10年後の風間もまだ登場していないので、成長した桐生と風間との関係性のギャップを見せるための伏線なのだろうけど、違和感MAXな感想は否めない。
桐生というキャラクターを演じるには渋みが足りないというのはまさにその通り。
それに、みんな小物に見えるのは年齢が若すぎるからでもある。
感想をいくつか抜粋する。
批判する為じゃなく向き合うために見るつもりだったがキツイ
物語を楽しむ為にどれだけ原作と切り離す見方をしても愛着がある人物がキャラ崩壊してるのはくるものがある
特にサイの花屋と由美が認識と乖離しすぎてて体調悪なってくる
色々と変更点があるのはドラマに落とし込む為なのも理解したいが、やはり長年ゲームを楽しんできたせいか、同じ名前で違う行動なのが受け付けない部分が多くて辛かった。何も知らない人が軽く見る分には楽しめると思うけど、ゲームを好きであればある程違和感に覚えるかな。
ヤクザ役の俳優が下っ端から上にいくに連れて顔に凄みが増していく。これは1つ良い点だと思います。
悪い点は他の全てです。
完全オリジナル脚本なんだから「原作と違う」と云う感想は的外れって意見がちらほら見受けられるけど、それなら──
「龍が如くを名乗るなよ」
真島のキャラクターはなかなか似合っているが、相方である冴島のモブキャラ感というかかませ犬感も怒りを買っているし、龍が如くゼロで中野英雄をモチーフにした重要キャラだる澁澤啓司を三下のチンピラの鉄砲玉にしたりと、原作が好きだとは思えないキャラクターの扱いに酷いを通り越して笑いすら込み上げてくる。
詳しく知らない人はあまり気にならない細かい点が原作ファンから怒りを買うのは必然というか仕方のないところかもしれない。
名前だけ使うなら「龍が如く」名乗るなよ。と言われても仕方のない演出が多いのだ。
ドラマの中で全キャラクターを出せるわけでもないので、名前だけでも使いたかったのかもしれないが、その出し方の問題かなと。
エンタメ映画としてのクオリティはあるが、原作ファンに向いていない
ただ、全否定するようなレベル感ではないとも感じる。
主演の竹内涼真氏もあえてそのキャラクターを模倣する方には行かなかったらしい。
「原作となったゲームシリーズには世界中にファンの方が大勢いらっしゃいます。ただ、僕らが挑んだのは、ゲーム原作を基にドラマならではのオリジナル・ストーリーや人物像のディテールをイチから作り上げていくことでした。」
とインタビューの中で話している。
「自分が一馬になりきるのではなくて、この役を僕自身に引き寄せないと、ちゃんと自分の肉体と魂を通じて誠実に新しく実写化できたことにはならないなと思ったんです。」
という感じで原作へのリスペクトは持ちながらも、オリジナルと同じではだめだという気迫を持って作り上げたとのこと。
確かに竹内涼真の肉体美はとても美しい。
2022年の年末ぐらいから、格闘技のトレーニングや体作りをしていたといい、朝倉未来氏に専属のトレーナーを紹介してもらっていたそう。
風間のおっさんへの謎の反抗期は反感を大きく買う要因になったし、年齢の違いもあって渋みがないのは事実であるが、この点においては役者としてかなり力を入れていたことはわかる。
原作の実写化依頼が来たからとりあえず作ってみたよ、みたいな映画もたくさんあるが、「龍が如く」は予算をかけてしっかりとした作り込みをしているのは確か。
ただ、その上で大きな原作改変というかキャラクターと要素だけ残して脚本というかキャラクターを大きく変えているので、「原作絶対!」の人にはとことん合わないような作りにもなっている。
俳優は素晴らしいが作り手側の意図に懐疑的になるのも仕方ないかなといったところ。
ゲームのような長いストーリーに大量の登場人物を入れ込むにはドラマとはいえ6話では駆け足になってしまうので、原作通りに撮影したらつまらなくなるはず。
「原作がストーリーとして完成されすぎているので逆にこれくらい改変してくれないと面白くないのでとても良いドラマだとおもう」
という意見もあり、パラレルワールドとして楽しむのも良いが原作ファンからしたらそんなパラレル要素はいらないという結論になる。
俳優が好きで見ている人や、サスペンスやクライム映画が好きで見ている人が、原作ファンの意図を汲んでなさすぎる点を意識する必要もないが、あまりの改変に作り手の原作へのリスペクトを疑い、残念だと感じている人も多いということは知っておきたいところ。
結局のところ誰向けに作ったのかになるのだけれど、少なくとも原作ファンには向けていない。
日本のクライムサスペンスとしては楽しめる内容にになっている。というより日本人が主役のドラマでここまでの予算をかけた作品を見れる機会なんてNetflixぐらいしかない。
舞台となった神室町は巨大な屋外セットで撮影されている。
主演の竹内涼真も
「タイムスリップしたみたいでした。監督の武さん、滝本(憲吾)さんが、本当に細部まで神経を張り巡らせて演出してくださったおかげで、ものすごくリアルになってると思います」
と述べている。
1995年と2005年という雰囲気の全く異なる二つの時代を1995年は華やかに描き、桐生のポジティブな野望と合わせて活気あふれる世界を演出していた。
対して2005年は状況が一変し、ひまわりにいた頃の桐生たちはもういない。大人の世界にもまれ、何かを背負ってしまった人間たちの悲哀がセットや世界観にも描写されている。
エキストラの数も尋常じゃなく、その一人一人にまで演技指導をしたという武監督のこだわりっぷりもさることながら、予算もその分多く使われているのだと思われる。
車を地面に落としたり、とにかく豪華なシーンが多い。
多分、原作を軽視しているわけではないが、バランスが映画としての世界観やスケールなど大作を作る方に比重がいってしまい、キャラクターの作り込みが甘いのではないかという気がした。
武監督は
「あえて原作ゲームはプレイしないまま撮影に挑んでほしい」
と賀来賢人にも伝えたそう。
漫画やゲームの実写化はどうしても、ただのものまねとかコスプレになりがちで、血の通った人間ドラマにするのであればその壁を取り払う必要がある。
だからこそキャラクターの持つ魅力そのものを壊し、人格が完成された桐生ではなく人間としての欠点も多い若造を出すことで、リアルな魅力を引き出したかったのだろう。
ここが大きなギャップを生んでしまったことで、物議を醸し出す結果になってしまったのだ。
批判を覆すような革新性が足りなかった
あと、単純に作品として飛び抜けた革新性は足りない。例えば「地面師」のような圧倒的な描写力と惹き込まれるような没入感までには至れていない。
ドラマとしてのクオリティが他を圧倒する存在であれば原作ファンの怒りの声が霞むほどに人気が出た可能性もあった。
日本のドラマとしてはクオリティは高いが、名作として数えられるかというとそうではない。
2024年話題になったドラマといえばに上がるほどのドラマかというと懐疑的だ。それなら純国産で作った「ライスマイル」の方が予算は少ないと思うが、こちらの方がはるかに名作であるし、「地面師」の方が予算に比例してクオリティも高い。
武監督が「全裸監督」ですでに実践している通り、海外資本を手に入れれば日本でもクオリティが高い作品が作れるのはわかっている。
そういう意味で目新しさは少なかった。
初回の3話では少なくとも革新性は現れていない。だからSNSが批判で埋まるのも仕方がないところ。
とはいえまだ3話しか見ていないので、残りの3話を見たいほどには楽しみではある作品。
全6話を見た上で最終的な評価をしたい。
河合裕実をはじめ豪華キャスト揃い
豪華キャストなのは単純に見どころ。ミスキャストなどの声も上がるが、年齢がゲームよりも若いのでどうしても違和感を覚えるのは仕方のないところだろう。
桐生一馬役の竹内涼真氏、錦山彰役の賀来賢人氏
錦の実の妹・錦山ミホを中山ひなの
風間新太郎を唐沢寿明
由美の生き別れの姉アイコを森田望智氏、犯人を追う東城会会長の佐々木大吾役に佐藤浩市氏、ヤクザ同士の大抗争を阻止すべく神室町を奔走する伊達刑事を渋谷すばる氏が演じます。さらに、ゲームファンから「嶋野の狂犬」として熱狂的な人気を集める真島吾朗役には青木崇高氏、由美が1995年に働いていたクラブセレナの麗奈ママ役には高岡早紀氏、近江連合の会長・郷田仁役に宇崎竜童氏、同じく近江連合会の鶴田浩二役に宇野祥平氏、1995年の堂島組の組長・堂島役に加藤雅也氏、元警察官で凄腕の情報屋である「サイの花屋」役に前野朋哉氏。
役者はとても豪華でAmazonがOriginalドラマとして力を入れていることがわかる。
特に、河合裕実の演技が凄すぎる
1995年と2005年の10年間で、いかに神室町で揉まれてきたのか、どれだけ過酷な人生をあゆんできたのかがわかるほど人間が変わっている。
冒頭ではまだ孤児院のひまわりでヤクザの世界を知らずに幸せに生きてきた少女の振る舞いは、正直なんだか青臭い演技だなと感じたが、10年後には夜の世界での仕上がってきた別人のようなキャラクターを披露する。
10年間にどれほどのことがあったのか、すき間を察するような演技がとてもうまい。
1995年の映像を見ていっても、ヤクザの世界、夜の世界に足を踏み入れ、だんだんと大人の闇を知り、ただの少女じゃいられなくなっていく雰囲気が多分に出ている。
宮崎あおいが大河ドラマ「篤姫」で見せた少女から大人になっていくにつれて成長した1人の人間を見せてくれたものと同じような感情を持った。
広瀬すずが「怒り」で見せたレベルの衝撃もあるし、宮崎あおいのような演技の幅を持っているのでキャラクターも非常に多彩。映画、ドラマに引っ張りだこなのも頷ける。
賀来賢人のようにわかりやすく闇堕ちしたキャラはともかく、由美のような変化は表面的には分かりにくいので、この表現力は素晴らしい。
他の映画やドラマでも肉体改造しているわけでもないのにもはや別人。ここまで人間を演じ分けられるのにはただただ感動。
このかた、あまりによく見るのでもう少し出演数をセーブして一本の価値をあげていってもいいのではないかと思う。
そんな感じで見どころもたくさんあるので、原作愛に懐疑的な点はありつつも最後まで観て改めて評価しても良いかと思う。